小野川を去った僧を追った娘
どんな伝承か
山形の米沢の奥に小野川の湯宿があり、小野小町が住んでいたところと伝える。その小野川に一日庵という寺があり、安珍という修行僧がいた。小町と縁のある美男で、米沢城下へ托鉢に回ると娘たちがそっと覗いて顔を赤らめた。雑穀問屋藤井屋清兵衛の娘キョが心を寄せ、いつしか二人は契りを持った。噂が城下に立つと安珍は小野川を去り、福島の方へ板谷峠を越えて行った。キョは追ったが雪が深く女の足では無理で、諦めきれずに沼へ身を投げたという。なおこの奥羽の安珍清姫の話は岩手県地方にもあると、遠野物語の佐々木鏡石が紹介している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。