兄妹と知った安珍清姫の心中譚
どんな伝承か
竜神村殿原の某家には、道成寺の安珍清姫とは異なる物語が古くから伝わる。奥州伊達家の家中村上某の妻は業病を得て、夫と子の安珍を残し熊野路を湯治して回った。病が癒えると真砂の里の庄司の妻となり清姫を生んだが、血筋を恐れて娘を毎日念仏の淵で水浴させ、村上家伝来の刀を残して世を去った。母を慕って紀州へ下った安珍は真砂の庄司の家を年ごとの宿とし、成長した清姫と契りを結ぶ。ある夜、清姫が形見に見せた則光の名刀から二人は兄妹と知れた。安珍は逃げ、追った清姫と潮見峠で再会し、日高川を渡って道成寺の和尚に懺悔した。その夜、寺に近い入江で二人の情死体が見つかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。