深夜のタクシーに現れては消える女
どんな伝承か
昭和五十二年八月、田辺市に住むCさんは和歌山市内から深夜一人でタクシーに乗り、田辺まで走らせた。隣の座席に白いパンタロンをはき髪をアップにした二十五、六歳の女が何度も現れては消えるのを見たが、気味悪がられて引き返されては困ると思い運転手には黙っていた。田辺に着くと運転手は暗いうちは帰れないと漏らし、実はその女の姿を自分も見ていたのだと語った(文・和田寛、『民話と文学』四号)。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。