足軽を投げ飛ばした御殿女中の化け物
どんな伝承か
大坂城の中ではさまざまな化け物の話が伝わるが、文政十三年十月の初め、加番の土井能登守が受け持つ山里丸の番人長屋に化け物が出た。夜中に目覚めた足軽が庭へ小用に出ると、二十二、三の御殿女中ふうの女が後ろに立っていた。気の強い足軽が取り押さえようとすると、逆に後ろへ投げ倒され、起き上がりかけたところを腕をつかまれて五、六尺引きずられ、気を失った。物音に起きた仲間が介抱して息を吹き返したが、女の姿はなかった。翌日、足軽の腕にはつかまれた跡が紫色に残り、のちに黄色く変わったという。
原典より
翌日彼の足軽の腕を見ると、握られたところが紫色になつて居り、後には黄色になつて居た。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。