渡辺はま子さんの話
どんな伝承か
歌手の渡辺はま子の話。横浜での友人の出版記念会のロビーで平野威馬雄に声をかけ、次のように語った。まだ日本に占領軍がいたころ、台湾へ演奏旅行に行き、台中の一流のホテルに泊まった。その晩から毎晩、女の泣き声と、たどたどしい英語でジミー、会いたい、抱いてちょうだいと幽かに叫ぶ声が聞こえる。便所へ行ってもついてくるように聞こえ、寝てもまだ聞こえた。付き人の娘にもはっきり聞こえ、三晩とも続いた。気味が悪くなって念仏を一心に唱えると、それきり聞こえなくなり、嬉しそうなすすり泣きだけが残った。後にホテルの支配人から、その部屋で終戦後間もなく女が自殺したと教えられたという。
原典より
この間、ヨコハマで、友人の出版記念会があり、その時ロビーで、「平野さん・・・・・・お化けの会なら、まっさきに私を呼んでくれるべきよ」と、肩を叩かれた。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。