楽屋で指先から虫を出した虫封じの術
どんな伝承か
肩こりや子どもの疳の虫に効き、体の毒素が虫となって出てくるという虫封じの術の噂を聞きつけた女性誌の記者は関西へ赴き、西宮市に住む藤村宮城を探し当てた。藤村は実験を引き受けて記者と上京し、夜の十一時半、東京12チャンネルの楽屋で経を唱えながら、歌手の桜田淳子の両の手のひらに墨で小さな経文を書いた。数秒後、天眼鏡で見ると、もやもやとした虫がふわりと吹き出していた。ヤクルト・ホールの楽屋では松島トモ子の指にも三、四ミリの虫が現れた。この術は昔から糸引きと呼ばれる俗間の霊怪だという。
原典より
藤村さんは、お経をとなえながら、すっていた硯の墨を毛筆にふくませ、まず桜田さんの左手のひらに小さな経文を右回りに書き込んで行く。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。