豊前坊のお堂で蚊帳を吊る老女の霊
どんな伝承か
宅島夫人が語った長崎での話。長崎に彦山権現の社があり、その山の下に本河内の町がある。夫人は同信の三人と、山の横手にある豊前坊という丘の上の小さな堂におこもりをした。畳敷きの堂の中は風ひとつなく蒸し暑く、蚊取り線香を忘れたため蚊に悩まされた。うとうとしているとザワザワと音がし、目を開けると品のよい老婆が腰をかがめて入ってきて、手つき身ぶりだけで堂の中に蚊帳を吊る様子を見せ、四隅に環をかけ終えると安心した表情で消えた。翌朝、一同は誰も蚊に刺されておらず、他の三人も緑色の麻の蚊帳を吊ってくれる夢を見たと語った。
原典より
蚊帳は見えませんでしたが、身ぶりは明らかに蚊帳をつっているのです。—— お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けは生きている――科学にとり残された霊の世界』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した、怪異と心霊をめぐる読み物である。読者から寄せられたお化けの報告や沖縄の刑場・遺念火の話、長崎の宅島夫人の霊視、和漢の古書に見える妖草妖木・狐・天狗・人魂などの物の怪、フォックス家事件やクルックスの実験など欧米の心霊研究を扱う。著者が始めた「お化けを守る会」の由来、西丸震也・星新一との座談会、透視や念力を試すテストを含む全七章に、あとがきを添える。