めざめ町の雨の道に座る骸骨
どんな伝承か
宅島夫人が二、三人の友人と、雨のしょぼつく秋の夜に、長崎のめざめ町の寺へお参りに行く途中のことである。片側が崖の道で、遠くに寺の門が見えたころ、百メートルほど先の道の真ん中に光るものがあった。目を凝らすと、あばら骨が一本ずつ白く輝き、黒い眼窩の大きな頭蓋骨をもつ完全な骸骨が、ぬかるみに座りこんで一行を出迎えるようにしていた。夫人はほかの人に見えては大変と、心の中で観音経を唱え、近づく前に成仏して消えてほしいと念じた。十メートルほど手前まで進むと、骸骨はすっと消えたという。
原典より
なんだろうと思って、よく見ますと、完全な形をそなえた骸骨なのです。—— お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けは生きている —科学にとり残された霊の世界(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けは生きている――科学にとり残された霊の世界』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した、怪異と心霊をめぐる読み物である。読者から寄せられたお化けの報告や沖縄の刑場・遺念火の話、長崎の宅島夫人の霊視、和漢の古書に見える妖草妖木・狐・天狗・人魂などの物の怪、フォックス家事件やクルックスの実験など欧米の心霊研究を扱う。著者が始めた「お化けを守る会」の由来、西丸震也・星新一との座談会、透視や念力を試すテストを含む全七章に、あとがきを添える。