篠ケ峠で耳元に迫る拍子木の音
どんな伝承か
横道翁が夜明け前から猟に出かけ、神の内の奥にある篠ケ峠を登っていると、中腹あたりで拍子木の音がかすかに聞こえてきた。人家から遠く離れた所なので不思議に思ったが、豪胆な翁は気にせず登り続けた。ところが音はしだいに近づき、ついには耳元で碁盤を二枚打ち合わせるような大きな音が鳴り響いた。やかましさに耐えきれず、さすがの翁も引き返し、それからは夜が明けるのを待って峠を越えるようにしたという。
原典より
横道翁之 今、、夜をこめて猟に行き、神の内の奥の篠ケ峠にかゝり、半迄登る頃、拍子木の音、幽に聞えけり。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。