溝のほとりで笑う青白い顔の老女
どんな伝承か
岩国の小学校の裏手にある溝側を、ある女姉妹が夜十一時ごろ通ると、境氏の屋敷あたりで何者かが竹を叩く音が拍子よく聞こえた。恐ろしく思いながらも用を済ませて帰る道すがら、再び溝側を通ると、顔色の青白い老女が立っており、「いとどいとど」と声を立てて笑っていた。姉妹は平気を装ってゆっくり歩き、二宮氏のそばの石橋を過ぎるとともに走って帰ったという。これは狐の化けたものだろうと言われた。
原典より
万で 、小学校の後ろの溝側或女姉妹、此の溝側を夜十一時頃通りけるに、境氏 氏、兼行の 今の内にて何物か竹を叩き、拍子、面白く聞えけれども、心中恐ろしくおもへども、是非通らねばならぬ故、通りけるに、其音絶たり。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。