長九郎娘の狐引き失踪
どんな伝承か
元文三年(一七三八)、上行合村の長九郎の娘は手代木村の市兵衛のもとへ嫁いでいたが、質物奉公に出されて実家に逗留していた際、ある晩ふいに姿を消した。狐に引き出されたのではないかと疑われ、村では必ず捜し出すようにと厳命が下った。娘は日光の先で見つかったが、発見されたときは狐付きのような様子だったと村役人が報告している。父の長九郎は女の欠落者を家から出したことを不届きとして手鎖・村預けとされ、娘自身も親を捨てて欠落したことを咎められたが、寺の取りなしにより二人とも許された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。