機動演習を見に出て消えた少年
どんな伝承か
大正八年十一月二日、青森県下の七戸町付近で第八師団の機動演習が行われた。町の北端に遊廓があり、そこから東北へ十丁ほど進んだところに、土地で膝森山と呼ばれる小さな森がある。前夜そのあたりに野営した両軍が夜明けに一斉に火蓋を切り、大砲や機関銃の音に眠りを破られた町の人々は、老いも若きも見物に出た。演習は一時間余りで終わり、兵は膝森山から二丁隔てた種馬育成所付近の広場に集まって師団長の講評を受け、解散して各方面へ引き上げた。その日の夕方、七戸尋常高等小学校長のもとに、一年生の友崎吉戸が朝五時ごろ演習見物に出たまま帰らないという報せが届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、中村古峽が著した変態心理学の論集である。二重人格、夢遊病、狐憑きや神隠し、催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教などの神憑りや心霊術を迷信として論じ、迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収める。著者自身の被験者や大本教訪問の見聞を例に引き、変態心理の解説から催眠術、宗教批判、犯罪の実話へと進む順に並べる。