まず狐を疑われた老人の溺死
どんな伝承か
宝暦三年、守山領小川村の七十余歳になる源左衛門が行方知れずになった。村ではまず狐に引かれたのではないかと疑い、山や池を捜し歩いた。次に川に落ちたのではないかと川筋をたどり、さらに、源左衛門が酒飲みであったことから酔って倒れたのではないかとも考えた。やがて川下から遺体が見つかった。外傷はなく、懐の金も取られていなかったことから、酔って川に落ち溺れ死んだものと判断された。行方知れずと聞けばまず狐を疑うのが、当時の村の常であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。