当主の姿を見れば死ぬミサキのフロ
どんな伝承か
三浦秀宥『荒神とミサキ』に載る禁断の森の話。苫田郡富村大のフロは、村を東方に見下ろす山の中腹にある。フロの下は谷で、そこの山田は「ミサキさんの田」と呼ばれ、下肥をしたり女性が入ったりしてはいけないとされた。フロにはミサキを祀る祠があるといわれるが、谷に近いある家の当主が元旦と旧暦九月九日の深夜に精進潔斎して餅を供えに参る以外、誰も近づかない。精進の悪いときには、森に入って祠を探しても見つからないという。また翌朝、当主が森から帰る姿を目撃した者は死ぬという言い伝えがあり、近隣の家では陽が高くなるまで雨戸を開けることすらはばかった。この祭祀は昭和二年まで続いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。