女中に化けて淵へ帰る雌の大蛇
どんな伝承か
石手寺の僧に退治されたのは雌雄の大蛇のうち雄のほうで、残った雌の大蛇は美しい女中に姿を変え、湧ヶ淵から少し下流の食場という地区の庄屋三好氏の屋敷に奉公した。新しく来た女中が夜ごと部屋から姿を消し、朝になると草履がびしょ濡れになっているのを家人が怪しみ、ある晩こっそり後をつけた。女は暗い夜道を怖がりもせずに進み、やがて湧ヶ淵の中へ入って見えなくなった。しばらくすると、両眼を鏡のように光らせた大蛇が水面に姿を現したという。この雌の大蛇もその後退治され、骨は三好氏の家宝として今に伝えられているとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。