無灯火の警官と書いた先生の始末書
どんな伝承か
大正時代、この辺りではまだ自転車も珍しく、警察の交通取り締まりは荷車か自転車が相手で、とりわけ無灯火にはやかましかった。窪川尋常小学校の先生だったSさんが無灯火で捕まり、警察でさんざん油を絞られ、いくら謝っても始末書を書けと言われた。観念した先生は、無灯火の自転車で通行中、無灯火の警官にとがめられご迷惑をおかけしたと書いた。そばの警官が慌ててそんなことまで書かなくてよいと言うと、本当のことですからと先生。警官も苦笑いして、今日は許すから二度とするなと帰してくれたという。
原典より
大正時代、まだこの辺では自転車も見かけることはまずなかった。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。