猪苗代湖の主を見た舟乗りの難船
どんな伝承か
明治四十二年の初冬の真夜中、横沢村川崎の滝田が小用に起きると、猪苗代湖の波音の間に人の叫ぶような声が混じっていた。家人を起こしガンドウをともして湖の方へ行くと、土手にずぶ濡れの男が倒れ、船が難破して仲間が死にそうだと訴える。案内された浜には中浜の舟乗り四人が息も絶え絶えに打ち上げられていた。介抱されて生き返った彼らは、二年前に鬼沼沖から湖心にかかったとき、岩と見えたものが大赤亀すなわち猪苗代湖の主であったこと、主を見た者は三年以内に難船するという言い伝えを恐れていたことを打ち明けた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。