伊勢湾台風の岩川に消えた二人の霊
どんな伝承か
昭和三十四年九月、伊勢湾台風で各地が大荒れした時のことである。岐阜県恵那郡岩村町で、恵南蚕糸組合長と同僚が家に帰る途中、自動車で岩川のほとりを走っていて車もろとも転落し、氾濫した川に流されて死体は見つからなかった。数日して現場付近を通る車に知らぬ間に人が乗っていたり、夜道で男が乗せてくれと呼び止めたりするようになった。青白い顔の生気のない男で、乗せてしばらくして後ろを見ると姿が消えており、座席は水で濡れて人が座った跡がついていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。