夜ごとバイクにせがむ女の声
どんな伝承か
昭和四十三年の話である。勤めていたハイヤー会社の車が、西平内で若い女を轢いて即死させてしまった。午後九時頃その車が会社に戻ってくると、運転手の一人が車を洗い、車輪にからまっていた女の髪などをまとめて裏に埋めたそうだ。まもなく家へ帰ろうとすると背中がぞくぞくし、バイクのエンジンがなかなかかからなかった。翌日も同じであった。三日目の夜、やはり家へ帰ろうとバイクにまたがると、「おらばも、乗せでけえ」と女の声がした。振り向いても誰もいない。二、三日続いたが、その後そんなことはなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。