刑務所へ戻りたくてバスの窓を割る
どんな伝承か
日曜の昼下がり、国鉄横須賀駅前で起きた騒ぎを週刊誌が伝えたもの。一人の老人が突然鉄パイプを振るい、停まっていたバス四台の窓ガラスを次々にたたき割った。派出所の目の前だったため、その場で現行犯逮捕された。男は六十八歳、かつてサーカスで剣劇を演じていた旅芸人で、三十五歳で傷害により服役して以来出入りを重ね、この十年で十回、計九年を刑務所で過ごしていた。前年に出所して宮崎市の老人ホームに入ったが馴染めず、神戸の親類にも冷たくされ、刑務所へ戻りたい一心で騒ぎを起こしたのだという。
原典より
白石に取材旅行に行って乗ったタクシーの運転手さんから聞いた話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。