事故死の夜に雨戸の外で聞こえた弟の声
どんな伝承か
昭和五十二年、福岡県大牟田市のある家族が、深夜零時頃、雨戸の隙間から弟のかすれた忍び声を聞いた。しばらく窓の外に足音と小声が続いたが、そのうち静かになった。夜遊びの戒めとほうっておいたが、いつの間にか寝てしまった。午前二時頃、弟が交通事故で十一時五十分に即死したという知らせがあった。家族は確かにその時刻にバイクのエンジン音と弟の肉声を聞いていた。弟は霊となって、自分の死を伝えに来たのだろうか、と家族は考えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。