落ちた写真の額と祖父の訃報
どんな伝承か
昭和十年の初秋のことだったと思う。兄とはよく取っ組み合ってふざけていたが、その日はおとなしくしていた。ところが夕方、突然、天皇と皇后が並んで写った写真の額が落ち、ガラスが割れた。口やかましい父だったので、どれほど叱られるかと身を縮めていたのに、父はいやな顔をしたきり黙って何も言わなかった。その夜八時ごろ、チチシス、と電報が届いた。祖父が死んだのである。あのとき額が落ちたのは、やはり死の知らせだったのだと思った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。