嵐の夜に消えた高尾山の大杉
どんな伝承か
武蔵の八王子の奥にある高尾山で一番の大木は、八人で抱えるほどの大杉で、古くから神木として土地の人に崇められていた。大正四年の夏のある夜、激しい嵐が山を吹き抜けると、翌日その大杉の姿が見えなくなっていた。村人は風で倒れたのだろうと見に行ったが、根こそぎ抜けた跡はあるのに、何十万貫あるかも知れない大杉そのものがどこにもない。村人が手分けしてあたりの山や谷を残らず探し回ったが行方は知れず、人々をひどく驚かせたという。
原典より
何十萬貫あるか知れない大杉が、根こそぎに抜けた痕があっても、樹の正體が何所へ往つたか少しも知れぬので騒動が起り—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。