特大の棺を選びに来た爺様
どんな伝承か
昭和四十年頃、三春町のある葬儀屋での話である。寸法を間違えてばかに大きな棺桶を作ってしまった若い者が、親方に叱られるからと奥に入れて隠しておいた。そのことは忘れていたが、暮れの忙しい時期の大掃除で見つかり、「何だこりゃ、長持ちみたいな棺箱だ」と笑っていた。そこへ離れた村から人が来て、「おめえ様のところに大きい棺箱はあるか。ゆうべ死んだ爺様は人よりずっと大きくて三倍ほども太っていた。死ぬ前に『こっちの店にはある筈だ、奥の方にあるから買うて来い』と言って目を落とした。それで来た」と語った。四、五日前に店の間がたいそう騒がしかったのは、あの時、爺様が棺箱を探しに来たのだろうと親方は言った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。