蜘蛛に生まれかわった弟
どんな伝承か
昭和四十三年のこと。静岡市安東に住む女性の弟は、癌で命を落とす直前に、自分が死んだら蜘蛛になって姉のところへ会いに行く、と言い残した。姉妹は何を言っているのかと笑っていたが、弟が世を去って一週間ほど経つと、姉が妙なことを言い出した。仏壇の弟の写真に向かって線香を焚くと、細く青みを帯びた美しい蜘蛛がどこからか現れ、煙が絶えると姿を消すというのである。妹は線香を好む虫だろうと取り合わなかった。ほどなく姉も癌で亡くなり、遺品のノートから蜘蛛になった弟へ宛てた手紙が出てきた。妹は一度だけ目にしたあの蜘蛛を、弟の生まれ変わりだと信じている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。