遺体安置所跡に響く鉄扉の音
どんな伝承か
愛知県蒲郡市宮尾温泉にあるホテルでの体験。伊勢湾台風で四千七百人ともいわれる死者が出た際、霊安所が足りず遺体は同ホテルの地下に安置されたが、身元不明のまま残された遺体もあったという。その地下室は後にバス乗務員や添乗員の宿泊部屋に転用された。先輩たちは口をそろえて「あそこは嫌だ」と泊まりたがらなかったが、語り手はある夜、観光バスの運転の帰りにその地下に宿泊した。深夜、鉄の扉がバターンと閉まる音が三度響いたが、廊下に人影はなかった。当時はその部屋も宿泊客もわずかで、一晩眠れぬまま朝を迎えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。