津波を鎮めた小僧と水弘法の清水
どんな伝承か
宝飯郡形原町の音羽部落に、水弘法と呼ぶ祠がある。昔、このあたりに津波があった時、どこからともなくみすぼらしい小僧が現れ、海に向かってしきりに読経していたが、またいつとなく姿は見えなくなった。それから間もなく津波は静まり、村人たちは最少の被害で水難を切り抜けることができた。その数日後、小僧が立っていたあたりの海辺から急に美しい清水が湧き出し、その水煙の中にいつかの小僧の姿がはっきり映っているのが見られたという。村人たちはこれこそ弘法大師の姿であろうと、報恩のため御堂を建て、大師の像を刻んで安置した。水弘法の名はこうして起こったと言い伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。