「私はマサコだ」と語り出した幼子
どんな伝承か
一九七〇年頃、愛知県渥美郡渥美町(現・田原市)でのこと。数え三、四歳だった私は母方の祖父母に預けられていたが、それまで無口で笑わない子だったのに、突然「私はマサコだ」と話し出した。「ここは私の家じゃない」と自分の家の様子を語り始め、祖父母は困惑して両親を呼んだ。父はサーッと顔色を変え、「マサコは私の姉です」と告げた。父の姉マサコは数え五歳で病死し、当時は土葬だったが焼骨せねばならぬ病だったという。位牌を調べると、マサコの位牌だけが先祖代々の場所と異なる位置にあり、遺骨も祖母がそばに置いたままだった。寺に相談し供養の読経をあげてもらうと、やがて「私はマサコだ」と言わなくなった。その代わり、私には予知能力が現れるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。