濡れタオルで入浴を装った新兵
どんな伝承か
出水海軍航空隊で教育訓練を受けていた頃、温厚な分隊長は入浴して体を清潔にするよう訓戒した。素直にバスに入ると、古参の一等兵から贅沢だと殴られる。かといって入らなければ今度は下士官から分隊長の言いつけを守らぬのかと精神棒で殴られた。入っても入らなくても殴られる状況で、洗面所で顔とタオルだけ濡らして戻り、入浴したように見せかけて叱責を逃れる要領を覚えたという。
原典より
昭和二十七、八年ころに聞いた話である。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。