週番腕章を借りて代筆した日
どんな伝承か
昭和十九年十月から二十年九月頃までの話。弘前東部第五十七部隊では非常呼集があると「カジダ、カジダ」と声が飛び、私物を持って逃げる。各中隊の週番下士官は集合を命じられ、週番下士手帳を持って連隊本部へ来いと言われた。ところが下士官には連隊副官の命令を筆記できない者が割合に多く、語り手は時々その週番腕章をつけた上衣を着せられて代行したものだという。その日は演習も使役も免除になるので、たいへん楽だった。
原典より
部下をよくいびる上官の軍力のさやに兵隊たちが醤油をいれておいた。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。