赤い軍服で出征した梅の木狸
どんな伝承か
愛媛県今治市の波止浜の梅の木狸は、日清と日露の両方の戦役に、一族を引き連れて出征したと語られる。日露の役では赤い軍服をまとった一隊となり、ロシア軍がいくら撃っても弾は当たらず、逆に赤い軍服の放った弾は百発百中だったという。その戦功によって梅の木檀十郎の名を賜った。ところが太平洋戦争には出征しなかったので、今度の戦にはあの梅の木さんが行っていないらしい、だから負けるかもしれない、という噂が立った。長橋之男が昭和十九、二十年ごろに聞いた話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。