五十年前にも起きた集団の乱心
どんな伝承か
岩原村の騒動を調べると、今から五十年ほど前にも村人十三人ほどが同じような乱心状態に陥ったことがあると分かった。その節は狂人たちの言い分に従い、長丞方に小宮を建てて祭ったところ、すっかり鎮まったという。今回も同様に小祠を建てるよう長丞に勧めたが、なかなか得心しなかった。乱心者を長丞方へ出張させると、久しぶりに我が家へ戻ったとばかりに乱舞し、長丞に難題を持ちかけ、犬の吠えるような声で薪を手に打ちかかったので、長丞一家は逃げ出す始末であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。