板女(続き)
どんな伝承か
夜、旅の女が家に忍び込み無断で飯を食べていたところを藤枝に見とがめられた。女は空腹に耐えかね詫びたが、藤枝がふと目を離した隙に、その姿は煙のように戸棚の前で消えてしまう。藤枝が「板女」と叫びながら斬りつけても手ごたえはなく、裏口の雨戸が開いているのに気づいて外へ飛び出した。人影を追って利根川縁まで一行で追跡すると、板女は蘆の中に隠れて盗んだ金を数えていた。追手が迫ると、女は金銀を投げつけて目をくらまそうとしたが、一人の男が女の足取りを追い、ついに斬り倒した。女はそのまま息絶えていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。