不死身の老剣客山内左内
どんな伝承か
棒で突いても刀で斬っても傷ひとつ負わない老人に降参した伝八郎は、弟子となって師弟主従の盃を受けた。文久三年五月、生麦事件の対英償金を運ぶ小笠原図書頭の一行が横浜へ向かう朝、六郷の手前の茶店に、宗匠頭巾に十徳の老人と若侍が俳諧師のふりをして酒を酌み交わしていた。老人が山内左内、若侍が伝八郎である。一味は行列を襲って償金を奪う手はずだったが露見し、伝八郎だけが六郷磧の蘆に逃げ込んで捕縄を逃れた。五、六日後、姿を変えて江戸へ戻る途中に鈴ヶ森を通ると、刑場の首晒台に並ぶ首の中に、素性の知れぬまま終わった老人と小桜・小紫の両太夫、口上いいの首が交じっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。