鞠を蹴った者
どんな伝承か
父を探して旅する広成は、増水で足止めされた宿駅に泊まっていた。夜、川べりを歩いていると、月明かりの下で三人の男たちが鞠を蹴り遊んでいるのに出くわす。何気なく飛んできた鞠を蹴り返すと、それは魚の浮き袋のようになまなましく気味の悪い感触だった。怒った男たちの中に、行方知れずだった父・広足の姿を見つけた広成は驚くが、父は「早く逃げよ、これはこの川に棲む魔物じゃ」と告げる。広成は刀を抜いて男たちに斬りつけ、父子はどうにか難を逃れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。