妖僧と妻の奇怪な出来事
どんな伝承か
僧を打ち据えて白状させようとすると、俯いていた女がふいに正気を取り戻し、飯田にすがりついて泣いた。それは確かに妻お高の声だった。お高は『背の高い坊主に睨まれてから何をしていたか分からない』と語り、腕には黒い爪形の傷痕が残っていた。妖僧はその二、三日後、勝沼に駐屯する官軍の手で処刑されたが、その頃にはもう飯田の姿は見えなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。