自白と同時に消えた腕の返り血
どんな伝承か
昭和元年の二月十二日の夜、大垣市伝馬町の自転車店へ強盗が入り、熟睡中の店主福野信行が殺害された。警察は捜索の末、市外今村町の精米屋の次男安田次郎を真犯人として検挙した。安田は斧で福野の頭部を粉砕して殺害したが、その際に飛び散った血が右の腕に付着し、いくら洗ってもこすっても取れなかった。ところが検挙されて犯行を自白すると同時に、その血は綺麗に取れてしまったという。安田にはこのほか、犯行の一箇月後に米原駅前の旅館で膳を二つ運ばれ、女中に被害者そっくりの二十五、六の連れがいたと言われた怪異もあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。