掘り出した古碑の主が憑いた漁師
どんな伝承か
高知県幡多郡下川口に麹屋屋敷跡という処がある。昔は庄屋が住んでいたが断絶し、以後住む者は永住せず借家人は次々に替わった。ある時小林区長が住んだ折に白髪の老人が出て化物屋敷と呼ばれた。その少し前、近くの田中文左衛門が屋敷の周囲を歩いていて突然倒れ、神主の祈禱を受けると霊が憑って「乃公の石碑の上を通った、早く掘り出せ」と告げた。掘ると元禄十五年八月七日銘の自然石の碑が出た。田中は祭ったが後は放置し跛者になった。大正十年三月頃、近くの漁師喜之助が五島で発狂し、神主の祈禱で行者田中甫仲郎の霊が祭祀を求め、村人が石碑を祭ると癒えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。