納戸町で消えた画家月岡耕漁
どんな伝承か
横井春野が神宮球場の野球を見ての帰り道、牛込の納戸町まで来ると、向こうから知り合いの画家月岡耕漁が歩いてくる。久しぶりだと声をかけて近寄ったところ、その姿がふっと消えてしまった。あたりを見回しても人影はなく、腑に落ちぬまま家路についた。ほどなく月岡の息子から、父が死んだと知らせる電報が届く。横井は月岡が病んでいることさえ知らなかったので驚き、すぐに月岡の家へ駆けつけた。耕漁が息を引き取ったのは、まさに横井が納戸町の路上でその姿を見かけたのと同じ時刻だったという。
原典より
* 二階の怪婆 (280)* 死んでいた狒々 (282)* 三度笠の旅人 (285)* 千疋猿の鍔 (286)* 屋根の上の黒猫 (287)* 左甚五郎作の大黒天 (288)* 十二号室の怪異…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。