長尾夫人が開いた念写の始まりと急逝
どんな伝承か
明治四十三年十二月、福来友吉は丸亀に住む長尾夫人に、種板へ文字を念じ込ませる実験を試みた。最初に郵送した「一心」の種板は長尾家の床の間に置かれたままとなり、現像すると全面が真っ黒に感光していた。二十六日、福来が持参した種板に「心」の字を念じさせると、文字の形は出なかったが、端の一部だけが感光した。福来はこれを念写の始まりとした。翌日には黒丸、続いて「天照」を試み、丸い形やはっきりした文字が現れた。翌年一月八日には物理学者山川による追試が予定されたが、助手の準備の手違いで意味をなさなかった。夫人は一月末にインフルエンザから肺炎と肋膜炎を併発し、二月二十六日に亡くなった。
原典より
其の形は心と言ふ文字でないけれど、兎に角能力者の念力によつて、種板の上に局部的感光の現象を生じたと言ふ事は、実り不思議なる出来事と言はねばならぬ。—— 心霊の現象(福来友吉) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の現象(福来友吉)
『心霊の現象』は、福来友吉が数年来諸雑誌、とくに弘学館の『ニコニコ』誌に通俗的に書いた文章から、心霊問題にかかわるものを選んで編んだ小冊子である。明治四十三年から長尾夫人・高橋夫人を相手に試みた念写の実験の経過を詳しく記し、夢による知覚や治癒、潜在精神から生じる病やヒステリーの事例を挙げる。念写、希望のニコニコ、「我の能力」と人性、生命学と心霊研究、動物主義、夢、潜在精神、精神的養生の諸篇を収め、各篇を節に分ける。