封のままの種板で不成功に終わった念写
どんな伝承か
長尾夫人の死で消えかけた千里眼問題は、高橋夫人の出現によって再燃した。夫人は明治四十三年十一月から兄の坂口二の誘導で千里眼能力を発揮し、四十四年五月七日に初めて念写に成功して十字架を写した。その後もプの字、三枚重ねの種板に雲の形、心の文字と続けて成功したという。本年三月、朝鮮から帰京した坂口が再び妹に念写を試みると、妙法と雲の形が写った。福来は高橋氏の訪問を受けてこの話を聞き、坂口と協議のうえ三回の実験を行なった。その第一回は三月二日夜、千駄ヶ谷の高橋氏住宅の付近にある坂口医師の宅で試みられ、高等師範教授の後藤牧太とともに写真館で買った一ダースの種板を封のまま用いたが、結果は不成功であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の現象(福来友吉・明治四十三年~大正期)
本書『心霊の現象』は、明治~大正期の心霊研究者・福来友吉による学術的な心霊現象論である。著者は念写実験(長尾夫人、高橋夫人の事例)を通じて超常現象の実証を試み、潜在精神・潜在意識の存在と活動を科学的に検証する。また夢の神秘性、潜在記憶、死霊との接触、ヒステリー現象などを、催眠術やフランスの心理学実験(ジャーネー、シャルコー)の知見を引用しながら分析している。