霧の川の対岸で手招く白装束の群れ
どんな伝承か
体外離脱の直後、佐藤国男さんの前の場面は一変し、深い霧に包まれた川の前に出た。霧があるのに向こう岸は見え、色とりどりの花の間に、白い着物を着て額に白い三角の布を着けた老若男女が何十人、あるいは百人ほどもいて、胸から上だけをのぞかせて手招きしていた。声は聞こえなかった。体がなく魂だけになった彼は、こちら岸の何もない空間を、風を切る音を立てて飛んでいたが、川を横切って渡りたいのにどうしても渡れず、流れに沿って川下へまっすぐ飛ぶばかりだった。後になって、あれが三途の川だったのかと思ったという。
原典より
川があって、あたりいちめん深い霧がありまして、霧の向こう側に色とりどりの花が咲いていたんです—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。