大曾根に降ったという黄金の大黒天
どんな伝承か
慶応三年十月、名古屋の藩医柳田泰治の門人沢井才一郎は、夜のうちに屋根から秋葉山へ連れて行かれたいきさつを泰治に語った。その中に当時の噂が出てくる。名古屋の東のはずれの町、大曾根に黄金の大黒天が天から降ったと聞いていた才一郎は、夜中に小便に立ったとき、大屋根の上に七、八寸ほどの金色に光るものを見つけ、もしやその大黒天ではないかと思って高塀に登った。すると知らぬ間に大屋根の上に出て、そのまま空へ引き上げられ、秋葉山の神前へ降ろされたという。
原典より
泰治昨夜は如何にして御山に行きしと問ひければ、夜前小便に行きしに大屋根の上に七、八寸廻りなる金光のもの有り、大曾根(名古屋東極ノ町名也)にて黄金の大黒天降り給ひしと承り候故もしやと存じ高塀へ登り候へば、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。