初対面の盲人の姓を呼んだ宗忠
どんな伝承か
弘化二年十一月のある日、悪性の眼病で両眼を失明していた赤木忠春は、播州の名灸へ向かう途中に叔父西村斎助との義絶を悔い、翻然と車を南に走らせて備前上中野村の黒住宗忠を訪ねた。忠春三十歳、宗忠六十六歳。その日はたまたま信者たちの集会日に当たり、宗忠は高座で説教中であったが、盲人の忠春が入り来るのを見るや喜色満面、いつもの明朗な大声で「赤木氏、ようこそ見えられた。待ちかねて居りましたぞ、ずっと近うお寄りなされい」と呼びかけた。一面識もない己れの姓を突然呼ばれ、忠春は甚だ奇異の思いに打たれたという。
原典より
忠春は一面識もない己れの姓を突然呼ばれて甚だ奇異の思いに打たれた。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。