注射で失神した女学生とレンゲ畑
どんな伝承か
昭和十七年、女学校三年生のときのこと。私はたいへんアレルギー体質で、ジフテリアの予防注射にあたって全身が頭の中まですさまじく腫れあがり、一、二時間後には失神してしまった。手足も冷たくなっていった。そのとき私は、美しいレンゲ畑の中に伸びる一すじの糸のような道を、すいすいと進んでいた。だが医師の手当てと周囲の呼び声によって意識を取り戻し、一命をとりとめたのである。生死の境で花畑を見たという臨死体験の一例である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。