毎日五条天神で待つ薬売りの老人
どんな伝承か
壺で常陸国へ運ばれた寅吉は、日が暮れると家が恋しくなって泣き出した。持て余した老人は、このことを誰にも話すなと固く口止めしたうえ、毎日五条天神の前へ来い、送り迎えして占いを教えてやると言い、寅吉を背負って一気に空を飛び、江戸の上野まで送り届けた。翌日の昼過ぎに寅吉が五条天神のあたりへ行くと、老人はもう待っていた。その日は何も教えず、山から山へ連れ回していろいろなものを見せ、夕方にはまた背負って送り返した。こうした日々が毎日繰り返されたが、家の者は寅吉が下谷広小路の茶舗の子のところへ遊びに行っているとばかり思っていた。連れて行かれた山は初め南台丈、のちに岩間山であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。