夢のお告げで屋根に現れた秋葉山の御札
どんな伝承か
慶応三年十月九日、名古屋の藩医柳田泰治の門人で十七歳の沢井才一郎は、知らない人が夢に現れ、火の物を断ち水を浴びて柳田家の東の土蔵の屋根に登れと告げたと言って食事をとらなかった。泰治は天狗にさらわれる者もいると案じ、修験の繁昌院へ断りに行かせたが、才一郎は昼ごろひそかに屋根に登り、棟瓦に石で押さえられた秋葉山大権現の御札を見つけてきた。家中が喜び、門に青竹を立てしめ縄を張って祀った。十三日、風もないのに竹が折れ、その夜才一郎は姿を消した。皆が燎を焚いて詫びていると竹が鳴り、才一郎が七五三縄の中ほどに掛かっていた。
原典より
太郎馬一心に神号を称し奉り、暫く拜伏して仰ぎ見れば、才一郎七五三の中程に掛りて、息在りとも思はれず、もて黙るにや有らむ、青竹にてはさみたるもの地に落ちたり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。