神が綱を掛けて引き寄せた浅野
どんな伝承か
浅野和三郎は綾部で初めて大本教祖の出口直に会った。澄子の案内で通された八畳の居間は壁も中塗りのままの質素な部屋で、直は丁寧に挨拶すると、神憑りの様子や予言の当否をめぐる浅野の問いに、昼食まで二時間あまり身を乗り出して答えた。浅野は丹波なまりの短い言葉に強く心を動かされ、この半日で魂はもう綾部の人になったと感じ、八か月後の十二月十日に一家で横須賀から移ってきた。その日直は、艮の金神は善一筋だが曲ったことを嫌う神だと語り、あなたは自分の意思で来たつもりでも、実は神が綱を掛けて引き寄せたのだと告げたという。
原典より
「貴下は今日御自分の勝手で、綾部へお参りの所思でせうが、実は神さんから引き寄せに成られたのです。神さんが綱を掛けなさッたのですぜ」—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。