手箱山の雪屋から城下へ献じられた氷
どんな伝承か
高知県いの町寺川の手箱山には、雪屋と呼ばれる氷室があったと伝わる。寛延四年から翌年まで寺川村に駐在した山廻役の春木繁則は『寺川郷談』に、手箱山は藩の御留山で、ここの雪屋には昔は毎年雪を詰め、二代藩主山内忠義の代までは毎年六月一日にその雪を壺に入れ、夜通し走る早飛脚で献上したと書いた。ただし春木の赴任時にはすでに跡しかなく、話は伝承になっていたらしい。氷室の場所ははっきりせず、昭和四十七年からの発掘で推定された山頂北東斜面に復元され、毎年旧暦六月一日に氷室まつりが開かれている。
原典より
周辺より著しく寒い土地がある天然クーラーの方は庶民が利用した世界遺産になった荒船風穴第10章 戦後も産屋に籠もる女性がいた産屋とは何か産婦の死と「ウブメ」安産祈願と犬卒塔婆—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。