寺野の賢見神社と犬神落とし
どんな伝承か
徳島県三好市山城町寺野の村はずれには、賢見神社という珍しい神社がある。犬神落としに霊験があることをうたい、各地から訪れる者が絶えない。平成二十七年二月、神社のそばで会った昭和十二年生まれの男性は、この村にも犬神筋の家が何軒かあり、みな親類どうしで、ほかの家は縁組みも交際も避けたと語った。犬神落としの祈禱は代々の神主が行い、子供のころ見たときには畳から五〇センチも飛び上がる人がいた。暴れたり叫んだりする者のため、座敷牢がいくつもあるという。
原典より
遅くとも中世には語られていたおわりに和歌山県の南東部、熊野地方は、いつとも知れないころから死者の国とされていた。—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。